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総務省は4月12日に、2018年10月1日時点の人口推計を発表しました。同推計を都道府県別にみると、人口が増えたのは東京圏(東京、埼玉、神奈川、千葉)と沖縄など7都県のみで、中でも東京の人口増減率は前年比0.72%増と2位の沖縄(0.31%)の2倍以上となり、人口の東京一極集中が依然として続いていることが浮き彫りになりました。東京一極集中が続くことは以前から想定されていたことであり、このトレンドが大きく転換する局面が近々訪れるかというと、その可能性は低いと思います。

ただ、人口集中は東京一極で起きているわけではありません。国立社会保障・人口問題研究所による「日本の地域別将来推計人口(18年推計)」で、15年から45年まで30年間の人口動向を全国1,798市区町村別(注1)にみると、地方圏(注2)の道県の多くで人口が大きく減少する半面、道県庁所在地や道県随一の経済拠点都市といった地方圏の中心的な都市で人口減少ペースが緩慢になることから、それら都市における人口集中度(道県に占める当該都市の人口割合)の高まりが明確です。例えば秋田県の人口減少率は都道府県で最大となる一方、県庁所在地である秋田市の人口集中度は15年の31%が45年には38%まで高まります。この傾向は沖縄・那覇市以外の道県庁所在地に共通してみられ、約半数の都市で人口集中度の高まりが4%ポイント以上と推計されています。この数値は、全国における東京圏の人口集中度(全国に占める東京圏の人口割合)の上昇率(3.4%ポイント)をも上回り、全国的な「多極集中」が見込まれています。

一方、大都市内の人口動向は今後、「都心集中」という特徴が際立ってきます。例えば、大阪市は市全体の人口が10%減少しますが、JR大阪環状線の内側とその周辺に位置する区部では10%を超える人口増加が予想されています。こうした状況は、他の政令指定都市や道府県庁所在地の多くも同様で、札幌市内の中心部と郊外、大阪府中心部と周辺自治体といった具合に、都心と周辺地域で人口の二極化が進みます。その背景には、商業、金融業、医療・福祉・教育などのサービス業や、外食産業・情報通信産業などの第三次産業が集積している都市に人口集中が進み、人口集中が続くから第三次産業の売上高や就業者数などの地域経済に占める比重が増し、さらに第三次産業が集積して人口が集中する……そんな構図が出来上がっていることがあります。人口の都心集中は今後も進展し、その動きを押し止めることはほぼ不可能だと思います。むしろ集中と、それによって生じる格差は、2つのトレンドによって拡大していくだろうとみています。

1つめは、地方の若年層の人口移動です。地元の高校・専門学校・大学を卒業した若い働き手は、まず実家から通勤できる地方圏の中心的な都市の企業に就職します。地元企業に数年間勤めた後、キャリアアップを求めて圏域の大都市の企業に転職し、さらに少しでも収入が多く見込まれる東京圏を目指す、といった多段階的な人口移動が活発です。第三次産業が「都市型産業」である性格を有することを踏まえると、このトレンドは今後も変わらないと思います。2つめは、住宅供給の変化と職住近接志向の高まりです。東京圏では、都心でもターミナル駅から少し離れた場所に立地する雑居ビルがオフィスとしてテナントを維持できなくなり、跡地は時間貸駐車場などを経てホテルやマンションに姿を変え、働く世代の人口流入を促しています。これが地方圏の中心都市に目を転じると、駅周辺など生活利便性の高い地域を中心にオフィスビルやタワーマンションが集積し、都市機能がコンパクトにまとまる一方、人口増加期に郊外のベッドタウンとして発展した地域では高齢世帯が増加したり、空き家・更地が目立つ「スポンジ化」現象が進んだりする様相が顕著です。かつては郊外に一戸建てを構える田園都市的な生活が志向されましたが、公共交通や医療・福祉、買い物などの生活環境を考えれば、働く世代にとっては郊外より都心のほうが充実している面があることに加え、介護人材の働き手の都心集中も考えると、高齢者も郊外から都心への人口移動がより進むのではないでしょうか。

第二次安倍改造内閣発足と同時にスタートした地方創生の第1期総合戦略は、19年度が最終年度です。政府は東京一極集中の是正に向けて、東京23区内の大学定数抑制や中枢中核都市の機能強化といった改革を矢継ぎ早に打ち出してきましたが、残念ながら是正の有効打とはなっていません。折しも、国立社会保障・人口問題研究所が4月19日に発表した2040年までの世帯数の将来推計では、40年には高齢世帯のうち一人暮らしが東京で45%超となるのをはじめ、全道府県で30%を超えます。前述の人口集中度を踏まえれば、東京圏など大都市圏はより広域から働く世代の人口流入が期待できますが、地方圏の中心都市は周辺人口の減少で働く世代の流入が先細る一方、高齢者の一層の都心集中が進む、ある意味厳しい状況が予想されます。

これからの地域の高齢者対策に必要とされるのは、人口の「東京一極集中」に加えて「多極・都心集中」を前提とした対応です。そのための着眼点は2つあります。1つめは、施策や事業は、自治体の枠を超えて近隣を含む複数自治体による経済圏単位で考えることです。今後は現在の自治体単位で行政サービスをユニバーサルに維持・提供していくことは難しくなるでしょう。政策的には「平成の大合併」に続く、もう一段の自治体集約まで踏み込むことを考えないと、単体の自治体が持続可能な行政サービスを展開することは不可能だと思います。2つめは、地域活性化の戦略立案を地方企業の経営者に委ねることです。地方創生の眼目である「まち・ひと・しごと」の好循環を生み出すのは、自治体職員にとって荷が重すぎます。政府の性急な改革に戸惑うばかり、といった声も聞きます。地域に根差した地方企業の経営者は、常に多様なアイデアの中から高付加価値のビジネスモデルを生み出して競争を戦い、中には東京を飛び越えて海外に活路を見出しているケースも少なくありません。そうした経営者に、地域の多様性を生かした独自の事業戦略を考えてもらい、自治体職員は施策推進の黒子役に徹するような関係性があってよいと思います。20年から始まるとみられる地方創生の第2期総合戦略では、国は財源移譲と規制緩和を進め、地方が独自の施策・事業を戦略的に生み出せるような方向性を期待したいと思います。(談)

注1:東京23特別区と12政令指定都市の128区、この他の766市、713町、168村。
注2:東京圏、名古屋圏[愛知、岐阜、三重]、大阪圏[大阪、兵庫、京都、奈良]を除く。

(2019年5月13日)

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